スペイン旅行記 25日目。 ポイントガードの彼
4月25日
そろそろこの旅も終わりを迎え始めていた。
今日を含め、あと4日である。
滞在期間で言えば、今日を含めると、あと3日である。
ここまできて、あと何を見ようか、とは思わない。
もう、ここに来て、見ようと思ったものはほとんど見た。
風景というものではなく、ガウディの建築物に限ってという意味で、だ。
なので、今日もいつものように、シウタデヤ公園に行く。
実は、明日、ある場所に行くのだが、その感想は、もちろん明日書く。
いつも決まった場所につく私なので、それも今日も崩すことなくベンチに座る。
今日はあの親子に出会わなかったが、それでもよく似た親子連れはたくさんいた。
それに加えて、出会ったものと言えば、路上パフォーマンスをする人たちに出会った。
5人組だったかと思うが、それぞれがマイクを持ち、ダンスと歌を歌うというスタイルだった。
重たそうなスピーカーからはそれらが流れ、気付くと彼らは大勢に囲まれていた。
もしかしたら定期的に活動しているグループなのかもしれない。
彼らを囲む観客から何回も声をかけられていた。
私は教科書をリュックにしまい、しばらくそれを見ていた。
ダンスの動きにキレがあるわけでもないが、それをまとめるリーダー的なポジションの彼が、良い風にメンバーを煽っているのが印象的だった。
あと、曲の終盤では観客にも声をかけ、「いつものいくから、皆も一緒に声を上げてくれ」的なことを言うわけなんだが、
私は彼らを見るのが今日初めてだったので、その「いつもの」がわからずにいた。
みんながその「いつもの」をせーので言ったとき、パフォーマンス集団の彼らと観客は一体となった。
その一体に加われなかった私は足早にその場を去った。
別に疎外感を感じたわけではない。
一体感を感じたいなんて、思ったりもしない。
しかも、今日初めて出会う彼らになんの印象もないし、付いていきたいとも思わない。
その場を去った理由は別にある。
さっきのパフォーマンス集団を見ているとき、彼らの後ろを通った何人かのグループがあったからだ。
そのグループの一人を私は知っている。
たしか、結構な有名人で、これは狙った訳ではないが、その人も私と同じ時期に、ガウディの建築物を見る為に、日本からここバルセロナへ来ていたのだ。
走っていったが、凱旋門をくぐったところで、見失った。
確かに知っている有名人だったのに。
ショックで、いつものベンチへ戻ろうとすると、後方から歓声が上がった。
どこかで有名人が一般人に見つかりでもしたんだろうか。
私はショックで、ベンチへ座り込み、スケートボードを楽しんでいる少年をぼーっと見ていた。
独特な髪型で、某有名漫画に出てくる、ポイントガードの彼のようだと思った。