スペイン旅行記 16日目。 雨天 傘
4月16日
4月16日、天候は雨。
いつもはシウタデヤ公園で、有意義な時間を過ごしているのだが、今日はそれが出来そうにない。
雨が降っている為だ。
雨くらいでなぜシウタデヤ公園での勉強が不可になったのか、それは私の勉強スタイルによるものだった。
いや、そんなこと戯れ言すぎる。
単純にベンチが濡れている為、だった。
ベンチが濡れていては、座ることが出来ない。
無理矢理にでも座ることは出来るが、それだとズボンが濡れてしまう。
さらに上空から降り注ぐ水の粒によって、大事な教科書が濡れてしまう。
そうなれば今後、勉強が出来なくなってしまう.
勉強するためにそこにいるはずが、勉強出来ない環境に陥ってしまうなんて、本末転倒過ぎる。
四字熟語に”過ぎる”という接辞をつけてしまっては、昔の人に笑われてしまうが。
いやしかし、100年ごとに言葉は進化を遂げると言われているのだから、このくらいの変化はその兆しといっても良いのかもしれない。
いやいや、しかし。
戯れ言すぎる。
戯れ言を繰り返しても天候は良くなることはないので、話を戻そう。
ホテルを出て、雨が降っていることを確認すると、私はひとまず行きつけのカフェに向かった。
幸い土砂降りというわけではなかったので、ほとんど濡れずに、店の中に入れた。
「カフェオレと朝食のパンちょうだい!」
店主であろうおばちゃんにそう言い放つと、いつもの席に座った。
しばらくするとおばちゃんが「おまたせ~」と美味しそうなパンと甘い香りのするカフェオレを、音もなくテーブルに置いてくれた。
食器の音がまったくすることなく、テーブルに置くという技はいつ見ても驚いてしまう。
食器は陶器だし、底にゴムがついているわけではないのだ。
ではこのテーブルがゴムで出来ているのかと言えば、そんな風には見えない。
しばらくこの謎と美味しい朝食を一緒に味わうことにした私は同時に今日の行動を企てることにした。
結論から言うと、まずは傘を買うことにしたわけである。
行動するにはこの天候を克服しなければならない為だ。
しかし傘がどこに売っているかわからない私は、適当に歩くことにした。
雨を躱し、建物から伸びる下屋の下で雨宿りをし、時間を止め、高速で動くことによってなんとかその雨と戦った。
そうやって雨と戦いながら歩き、走っていると、小さな雑貨屋を見つけた。
そこは妙に明るかった。
少しくらいは濡れてしまっているはずだった衣服は一瞬で乾いた。
これはすごいと感動したのも束の間、その店の店員が店の奥からふらっと出てきて、私に何かをすっと手渡した。
手にした何かに対して、疑問を持つことなく、3ユーロほどを店員に差し出すと、40セントを返してくれた。
店を出ると、雨が上がっていて、雲間から光が差し込んでいた。
こういう光をなんていうんだっけ、と、手に持っていた何かに視線を落とす。
それは目的のものではなかったが、その目的の物はもう必要なかったので、むしろこいつは良い買い物をしたと得をした気分だった。
また来てみようかと思考が及んだため、もう一度店を確認しようと振り返ると、そこはもう一つの行きつけのカフェだった。
「あれ?」
記憶力の劣る私はいつの間にか、いつもの場所に来ていたのだった。
雑貨屋に見えたのも、気のせいだったようだ。
手に持っていたのは、私がいつも頼む美味しいバケットだった。
リーズナブルで美味しいやつである。