スペイン旅行記 11日目。 破砕タイル
4月11日
破砕タイルを詳しく観察することにした一日。
建築の装飾の部分を担当している、このタイル。
日本でも壁や床、階段の仕上げや窓台のかわりとして使用されているタイルを、こういう風に使うのか、と衝撃を受けた。
そもそも資料としては既に見ていて、知っているのだけれど、それでも、実際に見るのは、既知のものとは全く違って見えるものだ。
常識的に言えばタイルは1枚の板で、その役割を果たしている。
そしてその板を敷設する面積に応じて、寸法を合わせ、貼っていく。
日本で使われているタイルのほとんどが、縦横30cmだろうから、例えば縦横1mの面積にタイルを敷いていくと、
目地の部分を考慮しないとすると、3枚と3分の1枚が必要になる。
すると、その3分の1枚の部分は1枚を3分の1にカットして、使用する。
もしくはちょうど真ん中から、左右対称に貼っていきたい場合は、2枚と3分の2が2枚必要になってくる。
どちらも4枚必要というわけだ。
ここで、スペインはバルセロナ、それもガウディ建築に話を戻そう。
ガウディ建築でのタイルの使い方は破砕、つまり、タイルを砕いて、使っているのである。
元々1枚の綺麗なタイルをわざわざ砕き、バラバラに貼るという手法。
これは という手法で知られている。
一つの個から、複数の個になり、対象にペーストする。
見る人はそれを複数とは捉えず、単一の対象物と認識する。
単一の対象物と言っても、当然複数のものが重なり、繋げられ、覆われて、出来ているものがほとんどだが、それでも、
この、元々重なるか、繋げられるか、覆うかをしていた装飾をさらに分解する、という発想に驚くのである。
ガウディは自然をよく観察していた。
おそらく、その自然の真理の一つがこの破砕タイルなのだ。
某哲学者も唱えていた「全は個、個は全」という考えにも通じていそうな発見を、ガウディは自身の中に大事に抱えるのではなく、
外界に向けて、大胆にそれを魅せた。
この時が、建築の概念が一つ作られた瞬間だったと思う。
そんな時代があって、それから今、もう100年が経っている。
建築の概念が作られている途上で、将来性、発展性はまだまだ世界のどこかに隠れている気がする。
そして、あの大きな協会が完成したとき、また建築の概念が一つ出来上がるだろう。
その時、私はどこにいるのだろう。
楽しみの一つを私は気長に待つことに決めた。
わくわく。